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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)12727号 判決

原告

東菱酒造株式会社

右代表者代表清算人

古市滝之助

右訴訟代理人弁護士

白井孝一

清水光康

杉山繁二郎

中村光央

増本雅敏

被告

右代表者法務大臣

前田勲男

右指定代理人

小尾仁

外七名

被告

全国小売酒販組合中央会

右代表者代表理事

小川邦和

右訴訟代理人弁護士

相原英俊

被告

日本酒造組合中央会

右代表者代表理事

大倉敬一

被告

末廣酒造株式会社

右代表者代表取締役

新城基行

被告

大谷醸造株式会社

右代表者代表取締役

大谷恭太郎

被告

桃川株式会社

右代表者代表取締役

村井達

被告

株式会社山形屋

右代表者代表取締役

山田彰一

右五名訴訟代理人弁護士

奥川貴弥

上條義昭

主文

一  被告国は、原告に対し、金三億〇九一五万一三〇三円及びこれに対する昭和六二年四月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二  原告の被告国に対するその余の請求及びその余の被告らに対する請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告と被告国との間においては、これを一五分し、その一四を原告の、その余は被告国の各負担とし、原告とその余の被告らとの間においては、全部原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  原告

1  被告らは、原告に対し各自金四四億三九七五万円及びこれに対する、被告国、同全国小売酒販組合中央会、同日本酒造組合中央会については昭和六二年四月一八日から、被告株式会社山形屋、同大谷醸造株式会社、同末廣酒造株式会社については同月一九日から、被告桃川株式会社については同月二一日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告ら

(被告国)

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。

3 仮執行免脱宣言

(その余の被告ら)

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、酒類の製造を業とし、国税の滞納をしたことのない優良企業であったが、良い酒を安く供給するという信念のもとに酒造組合、酒販組合などの価格統制に抵抗したことから、昭和四三年ころ以降、酒販組合による不買運動、業界の意向を受けた仙台国税局長による酒税保全名目の酒類保存命令という実質的差押え、融資予定者に対する原告への融資凍結要請、酒の級別審査拒否、新製品(米ビール)の出荷検定拒否及び業界・国税当局一体となった原告の酒の品質についての悪質な宣伝などの弾圧を受け、やむなく昭和五四年ころから国税を滞納するに至った。

2  仙台国税局徴収第一統括官鈴木康は、原告代表者(専務)古市善信(以下「古市善信」という。)に対し、昭和五七年一二月一〇日、差押えを受けるか念書を入れるかの二者択一を迫り、念書を入れれば差押えはしないと約束して国税支払に関する次の内容の念書に署名させた。

(一) 昭和五七年一二月中に

昭和五七年一〇月分を

(二) 同五八年一ないし三月中に

同五七年一〇、一一月分及び同五八年一月分を

(三) 同五八年四月中に

同年二月分と六〇〇〇万円を

(四) 同年五月中に

同年三月分と六〇〇〇万円を

(五) 同年六月中に

同年四月分と二五〇〇万円を

(六) 同年七月中に

同年五月分と五〇〇万円を

(七) 同年八月中に

同年六月分と五〇〇万円を

支払い、以後一か月平均二五〇〇万円程度を滞納酒税に充当して三〇か月で滞納を一掃する。

3  ところが、仙台国税局長は、昭和五八年一月一九日、原告の子会社である有限会社東駒会館所有の不動産を差し押さえた(以下「一・一九差押処分」という。)。

そのため、原告は、納税や事業に必要な資金調達のための担保を失った。

4  原告は、念書に見合う酒税として、昭和五八年一月二〇日から同月三一日までに八〇八二万円、二月中に一億〇二五〇万円、三月中に一億九一一四万円、四月一日から同月五日までに八四七八万円の合計四億五九二四万円を納付した。

それにもかかわらず、仙台国税局長は、同年四月四日、滞納酒税の担保として提供していた白河観光不動産株式会社所有の土地七八万平方メートル及び立木五〇〇〇石、原告所有の東京営業所(砂町)の土地三〇〇平方メートル及び建物三五〇平方メートル、工場財団(本社)の土地二万平方メートル、建物一万五〇〇〇平方メートル及び機械八四五点などを差し押さえた(以下「四・四差押処分」という。)。

しかし、原告は、同年五月二日、仙台国税局長に対し、前記一月二〇日から四月五日までの納付金は、昭和五四年度から昭和五六年度までの滞納酒税に充当する旨の上申書を提出して充当方法を指定したので、昭和五四年度から昭和五六年度までの滞納酒税のほとんどが納付済みとなった。したがって、仙台国税局長による四・四差押処分は超過差押えとなった。

5(一)  原告は、仙台国税局長に対し、昭和五八年四月二〇日、二七日、三〇日、五月四日と再三にわたって滞納酒税の納付計画の実行と四・四差押処分の解除を申し入れ、同年四月三〇日に三〇〇〇万円、五月二日に二〇〇〇万円を納付した。さらに、古市善信は、五月一〇日に九〇〇〇万円を持参して仙台国税局に赴き、残りを同月一一日から一〇日間毎日六六〇万円ずつ納付すると申し入れたが、仙台国税局はこの申し入れも九〇〇〇万円の受領も拒絶した。

(二)  そして、仙台国税局長は、同年五月一一日に原酒三四五〇キロリットル(アルコール分二〇パーセント換算)、清酒(製品)約八万二〇〇〇本、白米一一三二俵(一俵六〇キログラム)、機械二二九点、売掛金六五口、現預金一五口の大規模な差押え(以下「五・一一差押処分」という。)をし、原告の操業を不可能に陥れた。

(三)  被告国は、このとき既に一・一九差押処分と四・四差押処分とで原告の滞納税を賄うに十分(右二回の差押えによる物件の評価額は六億〇一〇〇万円を下らず、さらに担保のために保存している二億七〇〇〇万円相当の酒をあわせると、延滞税を含めた原告の納付すべき税額六億九八〇〇万円を優に超えていた。)であり、差押えの必要性は全くなかった。

なお、五・一一差押処分の差押物件の時価評価額は二〇億円を下らないから、右二回の差押えを考慮の外に置いても大幅な超過差押えである。

(四)  しかも、五・一一差押処分は、現に操業中の機械類をすべて停止させ、この機械及び仕掛品である大量の原酒を差し押さえるという異常なものであり、瓶詰や火入れ(加熱殺菌)を行わないなど原酒及び製品清酒を意図的に劣悪化する執行を強行した。

6  仙台国税局長は、昭和五八年五月一八日にも、原酒一〇七キロリットルを差し押さえた(以下「五・一八差押処分」という。)。

これも超過差押えである。

7  原告は、仙台国税局長に対し、昭和五八年五月一七日、一八日、二〇日と前記各差押処分の解除の申し入れをし、同月一七日には一億円、二〇日には一億五〇〇〇万円の納税を申し出たがすべて拒絶された。

8  仙台国税局長は、さらに昭和五八年五月二七日、原酒一八一キロリットルを差し押さえた(以下「五・二七差押処分」という。)。

この差押処分も超過差押えであるが、そればかりでなく、占有者でも原告の役員でもない原告の社員井上久寿男に右差押えにかかる原酒の保管を命じており、これは国税徴収法六〇条に反するものであって、その手続も違法である。

9(一)  仙台国税局長は、昭和五八年六月一五日、五・一一及び五・一八各差押処分にかかる原酒などを公売に付した(以下「本件公売」という。)。

(二)  原告は、五・一一差押処分に対しては同年五月二一日付けで異議申立てをしていたのであるから、差押財産の換価はこれに対する決定または裁決があるまで許されない(国税通則法一〇五条一項)。たとえ価額が著しく減少するおそれがあったとしても、本件の場合には、価額の減少は仙台国税局の異常・無謀な差押えに基づくものであるから理由にならない。

(三)  仙台国税局長は、換価の率を考えれば、随意契約方式によることがもっとも合理的であり、当時取引を求める者もいたにもかかわらず、公売に付したうえ、八億八〇〇〇万円以上の価値のある原酒などを二億五〇〇〇万円程度に評価した。

それだけではなく、仙台国税局長は、原告が落札するのを防ぐために、被告日本酒造組合中央会(以下「被告酒造組合」という。)、同末廣酒造株式会社、同大谷酒造株式会社、同桃川株式会社(当時の商号・二北酒造株式会社)及び同株式会社山形屋(以下、右末廣酒造株式会社以下四被告を一括して「被告四会社」という。)らと共謀し、新たに発生する酒税六億余円を加えて被告四会社に落札させたうえ、後に被告四会社が右原酒をアルコールとして売却したときに酒税分を還付するという約束をした。アルコールとして酒類の原料に用いるのなら、そのための移出には酒税法二八条一項の適用があるから、本件公売酒類はもともと同法六条の三第一項ただし書により非課税とされるべきものである。

被告四会社は、本件公売において、公売酒類を八億六〇〇〇万円余で落札し、アルコールメーカーへ売却後、六億余円の酒税の還付を受けた。

10  原告は、昭和五八年六月二七日の申立てに基づき、同年九月三〇日には福島地方裁判所の更生開始決定を得られる見込みであったが、白河税務署長は、これを知るや原告に対する十分な調査を行わず、再建が可能かどうかも検討せずに聴問も形式的に行っただけで、同月二七日、突然原告の酒造免許を取り消した。

11  被告国以外の各被告の責任原因

被告国以外の各被告は、被告国による前記違法な滞納処分に当初から加担していた。

被告酒造組合は、本件公売に際し、原告つぶしの意図を持って、国の違法不当な売却処分に協力し、被告四会社を自らの代表として公売に参加・落札させた。被告四会社はこれに加担した。

被告全国小売酒販組合中央会(以下「被告酒販組合」という。)は、国会議員に多額の献金をして国税当局に対する工作を行わせ、被告国の違法な差押え、公売及び免許取消しという一連の原告圧殺行為を企み実践させた。

12  原告は、これら一連の違法な差押・公売処分などによって、昭和五八年一二月二八日、破産宣告を受け、次の損害を被った。

(一) 原告は、前記差押えなどの直前(昭和五七年六月第三八期決算)までは、少なくとも過去三年平均の償却税引前で決算上四億七五〇〇万円の純利益をあげていたが、四・四差押処分以降これがすべて得られなくなった。これによる昭和五八年七月一日から昭和六一年九月末日までの損失は一五億四三七五万円である。

(二) また、昭和五八年六月第三九期決算における損失一七億三四〇〇万円、昭和五九年第四〇期決算における損失一一億六二〇〇万円は、専ら前記差押えなどの違法行為によるものである。

13  よって、原告は、被告ら各自に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、四四億三九七五万円及びこれに対し、被告国、同酒販組合、同酒造組合については昭和六二年四月一八日から、被告株式会社山形屋、同大谷醸造株式会社、同末廣酒造株式会社については同月一九日から、被告桃川株式会社については同月二一日から(以上の日はいずれも不法行為の後であり各被告に対する本件訴状送達の日の翌日である。)、それぞれ支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告国の認否及び主張

1  請求原因1のうち、原告が酒類の製造業を営んでいたこと及び昭和五四年ころから国税を滞納していたことは認めるが、その余は否認する。

2  同2のうち、鈴木康が、当時仙台国税局徴収部徴収第一統括国税徴収官であったこと、古市善信から原告主張のとおりの納付計画を記載した誓約書等(以下単に「誓約書等」という。)を受領したことは認める(ただし、誓約書等を受領したのは、昭和五七年一二月一〇日ではなく同月一三日である。)が、その余は否認する。古市善信は、自発的に、右納付計画及び「昭和五七年一二月以降の新たに納付することになる国税は期限内に納付し、既滞納分は分割納付する。計画どおり納付されないときは、いかなる処分を受けても異存がない。」との文言を記載した誓約書を提出したのであって、仙台国税局職員がこれを強要したことはない。

3  同3のうち、仙台国税局長が、昭和五八年一月一九日、原告の子会社である有限会社東駒会館所有の不動産(旅館及びその敷地)を差し押さえたことは認めるが、その余は知らない。

4  同4のうち、酒税の納付と差押えに関する主張は概ね認める。原告が、昭和五八年一月二〇日から同年四月五日までに納付した酒税額は、同年一月二〇日から同月三一日までに八〇八二万四四〇〇円、二月中に一億一二五〇万円、三月中に一億八〇〇〇万円、四月一日から四日までに三五九二万五一〇〇円の合計四億〇九二四万九五〇〇円である。差し押えた財産は、白河観光不動産株式会社所有の土地三筆の合計七六万五四二二平方メートル及び同土地のうち二筆の土地上に登記された立木合計二一六七立法メートル、有限会社共立酒販所有の土地230.59平方メートル及び建物(二棟)239.54平方メートル、原告所有の土地1万3010.63平方メートル、建物6904.27平方メートル、機械八六七点などから成る工場財団である。

請求原因4で主張されたその余の事実は否認する。原告は、五・一一差押処分についての異議申立書に上申書を添付していたことがあるが、これが仙台国税局長に提出されたのは昭和五八年五月二三日のことである。仮にこの上申書が国税の充当方法を変更する意思表示を伴うものであるとしても、右上申書は、既に仙台国税局によって誓約書に沿った充当がなされた後に提出されたものであるから、充当指定の効力を生じない。

四・四差押処分当時の原告の滞納国税額は、七億〇九四七万八四五一円(本税六億九三三四万四二三五円、加算税二三九万六八〇〇円、延滞税一九七三万七四一六円)に達しており、四・四差押処分の差押債権はそのうち昭和五四年七月三一日から昭和五五年六月三〇日納期限分の滞納源泉所得税三三二万四七一六円及び同年三月三一日から昭和五六年三月三一日納期限分の滞納酒税三億二〇二一万八八八六円の合計三億二三五四万三六〇二円である。四・四差押処分時の各差押不動産の時価評価額合計は五億八八〇七万四〇〇〇円であるが、これら不動産に設定されている先順位担保権の額を控除すると、四・四差押処分にかかる滞納国税額に充当可能な金額は七四六三万一〇〇〇円にすぎない。したがって、超過差押えではない。

5  請求原因5について

(一) 原告が納付計画の実行と差押処分の解除の申入れをしたことは否認する。

原告は、納付計画の変更を申し入れたにすぎない。原告が、昭和五八年四月三〇日に三〇〇〇万円を納付したことは認めるが、同年五月二日に二〇〇〇万円を納付したことは否認する。古市善信が同年五月一〇日に仙台国税局を訪れたことは認めるが、九〇〇〇万円を持参したことは否認する。

(二) 仙台国税局長が、同年五月一一日、ほぼ原告主張のとおりの物件について差押処分をしたことは認める。正確には以下のとおりである。

(1) 清酒

三三七万三九四〇リットル

(2) 瓶詰清酒1.8リットル詰

八万一八九一本

(3) 同   0.64リットル詰

一五六〇本

(4) 焼酎 四二一四リットル

(5) アルコール 一七三一リットル

(6) 醤油 四七三〇リットル

(7) みりん 三〇七〇リットル

(8) 精白米

六万七九二〇キログラム

(9) 動産 二三四点

(10) 現金 六万四八一五円

(11) 預金 一一四七万〇三一三円

(12) 出資金 三万〇〇〇円

(13) 入居保証金

一三二万四〇〇〇円

(14) 売掛金 四八〇七万二二八二円

(三) 五・一一差押処分が必要性のない差押えないし超過差押えであるとの主張は争う。原告の五・一一差押処分時の滞納国税額は、四・四差押処分時の滞納国税額から四・四差押処分後に納付された三〇〇〇万円を引き、昭和五八年四月三〇日納期限分の酒税本税を加えた七億八三五五万一九五一円であり、差押債権はそのうち督促状を発していなかった昭和五八年四月三〇日納期限分の酒税本税を除く六億七九四七万八四五一円である。五・一一差押処分の差押物件の当時の時価評価額は合計三億九三八五万五〇〇〇円であり、四・四差押処分による充当可能額と合わせても四億六八四八万六〇〇〇円(なお、一・一九差押処分にかかる被差押物件の時価評価額は二六七二万二〇〇〇円であり、これを加えても合計は四億九五二〇万八〇〇〇円にすぎない。)であるから、超過差押えでないことは明らかである。

(四) また、仙台国税局が、原告の作業を全面的に停止させた事実はなく、火入れ濾過のため容器間で移動中のものについては作業終了を待って差押えをしている。その他のものについても、仙台国税局は、原告に火入れの要請をした。それにもかかわらず、原告は、自ら火入れなどの管理作業を拒否し、仙台国税局が派遣した技術者が火入れ作業に着手しようとすると、原告の機械器具を使用することさえ拒絶した。

6  請求原因6は、超過差押えであるとの主張を除き認める。五・一八差押処分の差押債権は、五・一一差押処分と同一(六億七九四七万八四五一円)であるところ、五・一八差押処分の被差押物件の時価評価額合計は四八四万四〇〇〇円であった。したがって、四・四差押処分、五・一一差押処分及び昭和五八年五月一四日に行われた電話加入権の差押えによる充当可能額二〇万三〇〇〇円、さらに一・一九差押処分による充当可能額を合わせても五億〇〇二五万五〇〇〇円にすぎず、差押債権額に満たないことは明らかである。

7  請求原因7のうち、そのころ原告が差押処分の解除を申し出たこと、昭和五八年五月二〇日に原告から一億円納付するとの申出があったこと及び仙台国税局が差押処分の解除を拒絶したことは認めるが、その余は否認する。一億円納付するとの申出も口頭でなされただけで金銭の提供はない。

8  請求原因8のうち、仙台国税局が昭和五八年五月二七日に原酒一八一キロリットルを差し押さえたことは認めるが、超過差押えであること及び差押手続が違法であることは争う。

五・二七差押処分の差押債権は、五・一一差押処分の差押債権と同一(六億七九四七万八四五一円)であるところ、五・二七差押処分の被差押物件の時価評価額は六一八万三〇〇〇円であった。したがって、四・四差押処分、五・一一差押処分及び昭和五八年五月一四日に行われた差押えによる充当可能額、さらに一・一九差押処分による充当可能額を合わせても五億〇六四三万八〇〇〇円にすぎず、差押債権額に満たないことは明らかである。

また、徴税職員は、国税徴収法六〇条一項に基づき井上久寿男を通じて原告に差押物件の保管を命じたものである。差押えの効力は、同条二項により差押えの表示をしたとき(本件では差し押さえた原酒のタンクに封印をし、公示書によって差し押さえたことを明らかにしたとき)に生じるから、たとえ差押調書の保管命令の受命者の記載に不備があったとしても、そのことによって影響を受けない。

9  請求原因9について

(一) (一)は認める。

(二) (二)のうち、原告が五・一一差押処分に対して昭和五八年五月二一日付けで異議申立てをしていたことは認めるが、その余は否認する。本件では、差押酒類の価額が著しく減少するおそれがあったから本件公売は違法ではない(国税通則法一〇五条)し、前述のとおり品質低下の原因を作ったのも仙台国税局ではない。仙台国税局長において差押財産の価額が著しく減少するおそれがあると判断した理由は、五・一一差押処分時に採取した酒類見本について、昭和五八年五月一九日、仙台国税局間税部鑑定官室において成分の分析及び火落菌の検出試験をしたところ、容器番号三四三及び三六八号に火落菌が検出されたほか、同二一一及び二二一号についてもその疑いが濃厚であり、五・一一差押処分にかかる清酒について、その品質保全のため火入措置をとる必要があると認められたので、同月二〇日、古市善信に火入措置をとるよう要請したが、原告は火入措置をせず、同月二四日に再度原告の古沢製品部長に火入れをするよう指示したが、これも拒否されたためである。

(三) (三)のうち、被告四会社が公売原酒等を八億六〇〇〇万円余で落札したこと及びこの公売原酒などがその後蒸留酒製造者の製造場に移入され、右蒸留酒製造者が納税申告に当たって公売酒類に課された酒税相当額を控除したことは認めるが、その余は否認する。

仙台国税局長が公売の見積価額を定めるにあたっては、三名に鑑定させた上適正な価格(酒税込で八億三七三五万五〇〇〇円)を決定しており、酒そのものの品質が低いことや一般に公売価額は市場取引価額を下回るものであることから、公売価額がある程度低くなるのは止むを得ないことである。また、本件公売では、できるだけ多くの者を参加させ高価に売却するため、入札資格を酒類製造免許所持者だけでなく酒類販売業免許所持者にも認めたことから、酒税法二八条一項の未納税移出を適用することができなかったものである。

10  請求原因10のうち、原告の債権者が昭和五八年六月二七日福島地方裁判所に原告の会社更生手続開始申立てをしたこと及び白河税務署長が同年九月二七日に原告の酒類製造免許を取り消したことは認めるが、その余は否認する。

原告は、前記のとおり酒税滞納により差押処分をうけており免許取消事由に該当するのみならず、多額の負債を抱えており今後酒類の製造を継続することは極めて困難であった。白河税務署長は、原告に対し、四回にわたって聴問を行い再建計画の説明及び資料の提出を求めたが、裏付けのない努力目標を述べるのみで聴問事項についての弁明や証拠資料の提出はなかった。そこで、白河税務署長は、原告の酒類製造免許を取り消すことが相当と判断したものである。

11  請求原因11は否認する。

12  同12は争う。

三  請求原因に対する被告酒造組合及び被告四会社の認否

1  請求原因1のうち、原告が酒類の製造を業としていたこと、原告の国税納付状況及び原告の信念は知らない。その余は否認する。

2  同2ないし4は知らない。

3  同5(一)、(三)及び(四)は知らない。同5(二)のうち、昭和五八年五月一一日に仙台国税局が原告の財産を差し押さえたことは認めるが、数量などを含めその余は知らない。

4  同6ないし8は知らない。

5  同9(一)は認め、(二)は知らない。(三)のうち、公売酒類の評価額が二億五〇〇〇万円程度であったこと及び被告四会社が八億六〇〇〇万円余で落札し、アルコールメーカーへ売却したことは認めるが、その余は否認する。酒税の還付を受けたのは被告四会社ではなくアルコールメーカーである。

6  同10は知らない。

7  同11は否認する。

8  同12は知らない。

四  請求原因に対する被告酒販組合の認否

1  請求原因1のうち、原告が酒類の製造を業としていたこと、原告の国税納付状況は知らない。その余は否認する。

2  同2ないし10は知らない。

3  同11は否認する。

4  同12は争う。

第三  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一1  請求原因1の事実のうち、原告が酒類の製造業を営んでいたこと及び昭和五四年ころから国税を滞納していたことは、原告・被告国間においては争いがなく、その余の被告との関係では、原告代表者尋問の結果によってこれを認めることができる(なお、原告が酒類の製造を業としていたことは、被告酒造組合及び被告四会社との間においても争いがない。)。

しかし、請求原因1のその余の事実については、これを認めるに足りる的確な証拠がない。

2  請求原因2の事実のうち、鈴木康が、当時仙台国税局徴収部徴収第一統括国税徴収官であったこと、昭和五七年一二月に古市善信から(一)ないし(七)記載の納付計画を含む誓約書等を受領したことは、原告・被告国間に争いがなく、他の被告らとの関係でも乙第八号証の一ないし三及び証人鈴木康の証言によって認められ、また、右各証拠によれば、その受領日は、同月一三日であると認められる。

乙第九号証の三によれば、その際、鈴木康が、古市善信に対し誓約書等の記載を守って酒税を納付しなければ色々な処分をせざるを得ないと告げたことが認められるものの、差押えを受けるか念書を入れるかの二者択一を迫り、念書を入れさえすれば差押えはしないと約束したことについては、これに副うかのごとき証人永山宗治の供述があるものの、その供述内容自体から見てにわかに採用し難く、他にはこれを認めるに足りる証拠がない。

3  請求原因3のうち、仙台国税局長が、一・一九差押処分をしたことは、原告・被告国間に争いがなく、他の被告らとの関係でも乙第一一号証によってこれを認めることができる。

4(一)  請求原因4のうち、原告の酒税の納付と四・四差押処分に関しては、乙第一号証、第二号証の三、第一八号証の一ないし三及び弁論の全趣旨によれば、被告国の認否記載(第二、二、4)のとおりであったことが認められる。

ところで、原告は、右納付金が昭和五四年度から五六年度までの滞納酒税に充当された旨を主張する。しかし、原告が酒税納付の際にその都度ないしは事前に一括して誓約書等記載の充当方法と異なる方法を指定したことを認めるに足りる的確な証拠はない(原告代表者も、納付書の納付国税に関する欄を空白にした等の供述をするだけで、仙台国税局に対し充当方法の変更の意思を明示した旨の供述はしていない。)。また、甲第三六号証の六の三及び弁論の全趣旨によると、原告は、仙台国税局に対し、昭和五八年五月二日から同月二三日までの間に提出した同月二日付けの上申書により、原告が同年一月二〇日から四月五日までの納付金を昭和五四年度から昭和五六年度までの滞納酒税に充当するとの意思表示をしたことが認められる。そして、前記2に判示した事実によれば、原告と仙台国税局国税徴収官の鈴木康は、右上申書提出に先立つ昭和五七年一二月一〇日誓約書等により原告が同日以後納付する国税の充当方法について合意していたと認められ、債務者は債務の弁済をした後になって、その一方的な意思表示によって充当方法を変更することは許されないと解されるから、昭和五七年一二月一〇日から昭和五八年五月一日までの間に納付された国税は、すべて誓約書等に従って充当されたことになるというべきである。

(二)  乙第一、第二一号証、証人鈴木康の証言及び弁論の全趣旨によれば、昭和五八年一月一九日の原告の滞納国税額は六億四八七九万四九五一円であったこと、原告が昭和五八年一月二〇日から同月三一日までに納めた税金のうち七九八二万四四〇〇円は誓約書等の合意に従って昭和五七年一〇、一一月分の酒税に充当され、残りの一〇〇万円は納付計画外のものとして原告の指定に沿って昭和五七年一二月三一日納期限の新規酒税、同年一一月三〇日納期限及び同年九月三〇日納期限の滞納法人税に充当されたこと、昭和五八年二月中に納められた一億一二五〇万円は昭和五七年一一、一二月分酒税に、昭和五八年三月中に納められた一億八〇〇〇万円は同年一一月、一二月、昭和五八年一月分の酒税に、昭和五八年四月一日から四日までに納められた三五九二万五一〇〇円は同年一月分の酒税にそれぞれ充当されたこと、四・四差押処分当時原告の滞納国税額は七億〇九四七万八四五一円にのぼっていたこと、誓約書等の納付計画で同年三月中に支払わなければならないとされていた国税は、四・四差押処分が行われた昭和五八年四月四日の時点では納付済みであったが、納付計画の期限である同年三月末日時点では三五九二万五一〇〇円が未納で、右金額は、四・四差押処分の行われた当日に納められたことが認められる。

そうだとすると、原告の前記滞納国税につき差押えをする必要性があったことは明らかというべきであり、差押えの必要がなかったという原告の主張は理由がない。

(三)  次に、超過差押えであるかどうかを検討する。

(1) 乙第一八号証の一ないし三によれば、四・四差押処分の差押債権は、前記滞納国税のうち、昭和五四年七月三一日から昭和五五年六月三〇日納期限分の滞納源泉所得税と昭和五五年三月三一日から昭和五六年三月三一日納期限分の滞納酒税の合計三億二三五四万三六〇二円であったことが認められる。

(2) まず、四・四差押処分の前に一・一九差押処分がなされていたが、その差押財産からは滞納国税を回収する見込みがなかったものと判断される。すなわち、一・一九差押処分によって差し押さえられた物件は、乙第二三号証及び弁論の全趣旨によれば、不動産鑑定士の評価で昭和五七年八月二七日当時二九四〇万八〇〇〇円の価値を有していたとされたこと、仙台国税局長は、右価格をもとに時点修正を加え公売の特殊性を考慮して二六七二万二〇〇〇円と見積もったことが認められ、この見積価額は相当なものであると判断されるところ、乙第七号証の一及び二、第五七及び第五八号証によれば、右物件には、白河信用金庫を債権者とする一億円の根抵当権及び株式会社辺見商店を債権者とする四〇〇〇万円の根抵当権が付けられており、四・四差押処分当時国税に優先する債権がこの物件の価値を超えていたことが認められる。

(3) 次に、乙第二三、第二四号証、第二五号証の一、二、乙第五八ないし第六六号証、第六七号証の一ないし三、第六八号証、第六九号証の一、二、第七二、第七三号証、第七四号証一、二及び弁論の全趣旨によれば、四・四差押処分の差押財産のうち、不動産の不動産鑑定士による評価額は、白河観光不動産株式会社所有の土地及び立木が昭和五七年九月一日時点で八七八六万五〇〇〇円、原告所有の東京営業所(砂町)の土地建物が昭和五七年八月二七日時点で九七九〇万円、原告所有の工場財団を構成する土地建物が同日時点で三億五八五二万八〇〇〇円であること、原告所有の工場財団を構成する機械等について株式会社井上貞吉商店と銘醸機械株式会社の二社が鑑定を行ったところ、前者の方が後者より高く評価しその評価額は一億一二三八万六〇〇〇円であったこと、右各鑑定価格は、その後の公売における落札価格その他の事情に照らして相当なものであったこと、仙台国税局長は、これら鑑定価格に時点修正及び公売の特殊性による修正を施して白河観光不動産株式会社所有の土地と立木は七九〇七万九〇〇〇円、原告所有の東京営業所(砂町)の土地建物は九〇四三万七〇〇〇円、原告所有の工場財団を構成する土地建物は三億二八六四万九〇〇〇円、原告所有の工場財団を構成する機械等は八九九〇万九〇〇〇円と見積もったことが認められ、この見積価額は相当なものであったと評価できる。

(4) 一方、前掲乙号各証及び乙第三号証の一ないし五、第四号証の一ないし三、第六号証によれば、白河観光不動産株式会社所有の土地及び立木には白河信用金庫を権利者とする国税に優先する極度額一億三〇〇〇万円の根抵当権が設定されており、原告所有の東京営業所(砂町)の土地建物にも同金庫を権利者とする極度額同額の根抵当権が設定されているところ、同金庫は原告に対し昭和五八年五月一日現在一億二一六〇万七三五〇円の債権を有しており、四・四差押処分当時でもこの金額を下ることはなく、同金庫が同様に根抵当権を設定している一・一九差押処分の差押財産の時価見積額二六七二万二〇〇〇円を差し引いても、九四八八万五三五〇円の債権が、白河観光不動産所有の土地・流木及び原告所有の東京営業所(砂町)の土地建物によって同金庫のために担保される額として残ること、原告所有の工場財団(本社)を構成する土地建物及び機械等には、株式会社日本興行銀行他九社を権利者とする抵当権または根抵当権が設定されており、この工場財団によって担保される(国税に優先する)債権の額は四・四差押処分当時一三億七五三八万九〇〇〇円であることが認められる。

(5) 以上によれば、四・四差押処分の差押物件から国税として回収することが見込まれる額は、白河観光不動産所有の土地・立木と原告所有の東京営業所(砂町)の土地建物を合わせて七四六三万〇六五〇円、原告所有の工場財団についてはゼロとなる。したがって、四・四差押処分にかかる差押財産が徴収すべき国税の額(差押債権額)を超えていないことは明らかである。

5  請求原因5について

(一)  原告が昭和五八年四月三〇日に三〇〇〇万円の国税を納付したこと及び古市善信が同年五月一〇日に仙台国税局を訪れたことは、原告・被告国間には争いがなく、他の被告らとの関係でも弁論の全趣旨によってこれを認めることができる。

しかし、同年五月二日に二〇〇〇万円を納めたと認めるに足りる証拠はない。また、古市善信が九〇〇〇万円を持参していたことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、例え仙台国税局長が四・四差押処分解除の申し入れを拒絶したとしても、何ら違法ではない。

(二)  五・一一差押処分がされたことは、原告と被告酒販組合を除く被告らとの間では争いがなく、弁論の全趣旨により被告酒販組合との間においてもこれを認めることができる。

甲第三六号証の一の一ないし一〇、乙第八二号証及び弁論の全趣旨によれば、五・一一差押処分の被差押物件は、瓶詰前の清酒(被告国の認否5(二)(1)記載のもの)が三三四万五一八三リットル(アルコール分二〇パーセント換算では三四二万二七八七リットル)、預金が一一四七万一〇九四円(同5(二)(11)記載のもの)、入居保証金(同5(二)(13)記載のもの)が一七四万四〇〇〇円であった他は、被告国主張のとおりであったと認められる。

(三)  ところで、右(二)に掲記した各証拠と弁論の全趣旨によれば、五・一一差押処分当時の原告の滞納国税の額は、七億八三五五万一九五一円であり、五・一一差押処分は、この滞納国税から昭和五八年四月三〇日納期限分の酒税本税一億〇四〇七万三五〇〇円を除いた六億七九四七万八四五一円を差押債権として行われたことが認められる。

なお、弁論の全趣旨によれば、仙台国税局長が、四月三〇日納期限分の酒税本税を差押債権に入れなかったのは、右酒税については督促状を発付していなかったためであると認められる。そして、四・四差押処分の各差押財産から回収の見込まれる国税額は、前記4で示したとおり七四六三万〇六五〇円であるから、これを右差押債権六億七九四七万八四五一円から差し引くと、六億〇四八四万七八〇一円となる。

原告が酒税の担保に代えて清酒を保存していた(酒税法三一条一項)ことは、証人荒木謙次の証言によって認められるが、その量を確定し価格を認定するに足りる証拠はない(もっとも、五・一一差押処分当時の滞納額から一・一九差押処分と四・四差押処分による差押財産を引いた額は、二億七〇〇〇万円を超えるから、右保存清酒が原告主張のとおり二億七〇〇〇万円であったとしても、五・一一差押処分なしに滞納国税が賄えるわけではなく、また、証人鈴木康の証言及び弁論の全趣旨によれば、右保存清酒は、すべて五・一一差押処分の被差押物件に含まれていると認められる。)。

(四)  そこで、五・一一差押処分の被差押物件の時価評価額について検討する。

(1) まず、請求原因に対する被告国の認否5(二)(1)記載の清酒(以下「(1)の清酒」といい、同様に被告国の認否5(二)に記載された番号に従い同(2)記載の瓶詰清酒を「(2)の清酒」などという。)について検討する。

清酒の価格を判断するにあたっては、一般市場のおけ取引(酒税法二八条一項四号又は同法施行令三二条の適用を受けて未納税移出入される清酒の売買)価格を基準とし、この価格に品質による増減をしたうえ公売の特殊性などの減額要素を考慮して減額すべきである。

乙第一九の一ないし三(鑑定人による評価書)及び証人大沼堅司の証言によれば、次の事実が認められる。

(1)の清酒を鑑定した三人の鑑定人は、いずれも(1)の清酒を官能審査(利き酒)により七段階に評価した。評価の基準は、優秀なものを一、良好なものを二、普通と考えられるものを三、まずまずと考えられるものを四、明らかに欠点のあるものを五ないし七とし、一般に流通している清酒の標準的な品質を三におくものであった(証人大沼堅司は、同証人による鑑定評価は、(1)の清酒中における相対的な順位をきめたものにすぎず、(1)の清酒のうち標準的な品質を有するものは、七段階中一と評価されたものだけであると証言するが、同証人による鑑定は、酒の価格を決定するために行われたものであり、一般に流通している他の酒との品質の比較をしなければ価格を決めることは不可能であるから、(1)の清酒中の相対的評価のみを依頼されたとはおよそ考えられないこと、また、同証人は、通常の官能審査は五段階評価によってなされ、品質が優秀なものを一、良好なものを二、普通と考えられるものを三、まずまずと考えられるものを四、明らかに欠点のあるものを五とするものであるため、(1)の清酒を審査するときにも当初は五段階評価で行っていたが、後半になり五段階に納まらないような品質の悪いものが出てきたため五の段階をさらに三つに分け七段階にしたと証言していることからして、標準的な品質を有するものを三としたと認められ、これに反する同証人の前記供述部分は採用できない。)。(1)の清酒は、七二個のタンクに入れられ、各タンクの容量とアルコール分はそれぞれ異なっており、官能検査の採点は、タンクごとに行われた。このタンク別の採点結果にそれぞれのタンクの容量とアルコール分を乗じたうえ全タンクの平均点を出すと、鑑定人馬目一郎は3.70(小数点第三位以下四捨五入)、大沼堅司は2.97、広島吾朗は3.97となり、三人の平均は3.55となる。

そうすると、(1)の清酒は、官能審査の結果、標準よりやや劣るもののまずまずの品質を有していたと認められる。官能検査結果と価格との関係については、三鑑定人すべてが点数一点につき一般の清酒の標準価格から五パーセントの割合で増減させている(乙一九の一ないし三)から、(1)の清酒を官能検査結果によって価格算定するには、一般市場の標準的なおけ取引価格から五パーセント減価するのが適当と認められる。おけ取引の標準価格としては、当時の全国平均のおけ取引価格を用いるのが妥当と考えられるところ、乙第一九号証の一及び二によれば、昭和五七年度調査による全国平均のおけ取引価格はアルコール分二〇パーセント換算で一リットルあたり二二六円であったと認定できる。(1)の清酒の量は、前述のとおりアルコール分二〇パーセントに換算すると三四二万二七八七リットルであるから、(1)の清酒の価格は、七億三四八七万二三六八円(小数点以下切捨て。以下同じ。)となる。

また、乙第一九号証の一ないし三によれば、(1)の清酒には、買受人による火入れと炭素の濾過を必要とするものが多く、そのための費用と品質低下を考慮して右価格から七%を減額することが妥当と認められる。

さらに、被差押物件は、公売に付されることを前提とするものであるところ、公売においては、返品・取り替え等につき制約があり、代金を即座に払わなければならず、手続きが煩瑣であるという特殊性があるので、これを考慮し、二〇パーセントの減額をするのが相当である。

なお、証人池田瑛の証言によれば、本件清酒に多量の米粉糖化液が使用されていることが認められるけれども、証人大沼堅司の証言によれば、一般の清酒にもぶどう糖が添加されており米粉糖化液もこれと性質の違いはないこと、米粉糖化液が使用されると味は落ちるがそれは既に官能検査によって評価されていることが認められるから、米粉糖化液を使用していることを独立の減価要素とすることは妥当でない。

以上によれば、(1)の清酒の価格は、五億四六七四万五〇四一円となる。

(2)  (2)の清酒は、官能検査がなされていないので、品質については(1)の清酒と同様と考えるほかなく、まず、一般市場のおけ取引価格の五パーセント減とするのが妥当である。甲第三六号証の四、乙第一九号証の一ないし三によれば、(2)の清酒の量はアルコール度数を二〇度に換算すると一一万三五三五リットルとなること、炭素の濾過のために更に五パーセントの減額(瓶詰なので火入れによる減額はしない。)及び公売の特殊性から二〇パーセントの減額をし、これに瓶代を一本三〇円として合計二四五万六七三〇円を加算することがそれぞれ妥当であると認められる。

したがって、(2)の清酒の価格は、二〇九八万二四六二円となる。

(3) 乙第二六、第二七号証によれば、(3)の清酒、(4)の焼酎、(5)のアルコールは、いずれも不快臭を呈し味のバランスを欠くことからこのまま酒類として販売することは困難であり、再蒸留により原料用アルコールとして製品化せざるを得ないこと、通常原料用アルコールには、主原料として輸入の粗留アルコールが使用されていることから、(3)の市価の基準としては粗留アルコールの取引価格である一キロリットルあたり七万九五〇〇円(アルコール分八八パーセント)を基準にするのが妥当であることが認められる。そして、既に認定したこれらの酒類の量から、これらが再蒸留して原料用に用いるためのものとしては少量であり運賃が割高になることが予想されること、再蒸留のための経費と目減り分を見込む必要があるので三〇パーセントを減額し、さらに公売の特殊性から二〇パーセントを減額することが妥当と考えられ、これに個々の製品のアルコール濃度による修正を行うと、(3)の清酒の価格は六九万八一四四円、(4)の焼酎の価格は一一万一七九九円、(5)のアルコールの価格は三万五〇二九円となる。

(4) (6)の醤油及び(7)のみりんは、乙第八二号証及び弁論の全趣旨により、合わせて二七万六〇〇〇円と評価すべきものと認められる。

(5) (8)の精白米は、甲第三六号証の一の五、同号証の四及び八により、一三九二万六〇〇〇円と評価すべきものと認められる。

(6) (9)の動産は、乙第二八号証及び弁論の全趣旨によれば、八九七一万一〇〇〇円と評価すべきものと認められる。

(7) (10)ないし(14)の現金や債権などの額は、(二)で認定したとおり合計六一三八万二一九一円である。

(8) 以上を合計すると、七億三三八六万七六六六円となる。

(五)(1) ところで、滞納者の財産を差し押さえる場合、どの財産をどの範囲で差し押さえるかは、差押処分時における財産評価の困難性や、国税の徴収が公売等による換価を待って初めて実現すること等に照らし、徴収職員の合理的な裁量に委ねられていると解される。したがって、被差押財産の価額が滞納国税の額を超過した場合においても、直ちにその差押えが超過差押えとして違法となるのではなく、滞納国税に比較して被差押財産の価値が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であると認められる特段の事情が有る場合に初めて違法となると解するのが相当である。

(2)  ところで、五・一一差押処分当時の滞納国税額から四・四差押処分により回収の見込まれる額を差し引いた金額は、(三)で判示したとおり六億〇四八四万七八〇一円であるところ、(四)で判示したように被差押財産の価格は七億三三八六万七六六六円であって、徴収すべき滞納国税額を一億二九〇一万九八六五円超過して行われたことになる。

しかし、右(1)の観点に加え酒類等品質が価格に大きく影響する財産の場合、差押処分時の評価がとりわけ難しいことを考慮すると、右差押処分は、合理的な裁量の範囲を超えた違法なもの評価するのは相当ではない。

(六) 仙台国税局の徴収職員が、五・一一差押処分の際、限に操業中の機械類をすべて停止させ、火入れを行わない等意図的に原酒等の品質を劣悪化させる執行を強行したと認めるに足りる客観的な証拠はない。

6(一)  仙台国税局長が、昭和五八年五月一八日に原酒一〇七キロリットルを差し押さえたこと(請求原因6)は、原告と被告国との間に争いはなく、他の被告らとの関係でも、弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。

弁論の全趣旨によると、五・一八差押処分当時の滞納国税額は、五・一一差押処分当時と同じであり、五・一八差押処分当時昭和五八年四月三〇日納期限の酒税一億〇四〇七万三五〇〇円について督促状を出していなかったことも五・一一差押処分と同様であると認められる。

(二)  また、仙台国税局長が、昭和五八年五月二七日に原酒一八一キロリットルを差し押さえたこと(請求原因8)は、原告と被告国との間に争いはなく、他の被告らとの関係でも、弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。

そして、甲第三六号証の一三によると、五・二七差押処分は、五・一八差押処分と同じ国税を差押債権として行われたことが認められる。

(三) そうすると、五・一一差押処分が徴収すべき滞納国税額を超過していたことは、5(五)で判示したとおりであるから、五・一八差押処分及び五・二七差押処分をする必要性はなかったことに帰する。

(四) しかし、右両差押処分にかかる原酒の価格は、合計三〇三八万九六七三円にすぎない。すなわち、五・一八差押処分で差押えられた原酒は、甲第三六号証の一の一一及び同号証の四によれば、鑑定人大沼堅司の官能検査によって七と評価され、アルコール分は17.7パーセントであることが認められるから、5(四)(1)に示したのと同様にして価格を算出すると一二七三万七九一六円となり、また、五・二七差押処分で差押えられた原酒は、右甲号各証によれば、鑑定人大沼堅司の官能検査によって七と評価され、アルコール分は14.5パーセントであることが認められるから、5(四)(1)に示したのと同様にして価格を算出すると一七六五万一七五七円となる。

そして、甲第三六号証の一の一一、一三及び弁論の全趣旨によれば、右両差押処分にかかる原酒は、前記五・一一差押処分当時「もろみ」であったものが製成されたものであって、右各差押処分の月日からしても、実質的に見れば、後者の両差押処分は五・一一差押処分の継続する一連の手続と評価することもできる。

以上の諸点及び前記5(五)に説示した差押一般の特質等を総合考慮するならば、五・一一差押処分と同様に合理的な裁量の範囲を超えるものではなく、違法な処分ではないというべきである。

7  請求原因7記載の差押解除については、仮に原告主張のとおり昭和五八年五月一七日と二〇日に合計二億五〇〇〇万円の納税の申入れをしたものとしても、右金額は差押えにかかる国税額(六億七九四七万八四五一円)には到底及ばないことが明らかであり、解除が認められる余地はないというべきであるから、仙台国税局長がこれを拒絶したものとしても、何らの違法性もない。したがって、主張自体失当である。

8  なお、原告は、五・二七差押処分において被差押物件である原酒の保管を命じた手続の違法をいう(請求原因8)が、右違法行為と原告が本訴において賠償を求める損害との間に関連性があるとは認め難いから、右主張も失当であるといわざるを得ない。

9  請求原因9について

(一)  仙台国税局長が昭和五八年六月一五日に本件公売をしたことは、原告と被告酒販組合を除く被告らとの間に争いがなく、被告酒販組合との間でも甲第三六号証の三によってこれを認めることができる。また、右甲号証によれば、本件公売に付された物件は、(1)の清酒、(2)の清酒及び(8)の精白米であったことが認められる。

(二)(1)  原告が五・一一差押処分について昭和五八年五月二一日付けで異議申立てをしていたことは、原告と被告国間に争いがなく、他の被告らとの間でも弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。

乙第一号証、第二〇号証の一の一及び一の二によると、仙台国税局鑑定官室の試験担当者が、五・一一差押処分時に採取した酒類見本について、昭和五八年五月一九日成分の分析及び火落菌の検出試験をしたところ、容器番号三四三及び三六八号に火落菌が検出されたほか、同二一一及び二二一号についてもその疑いが濃厚であり、五・一一差押処分にかかる清酒について、その品質保全のため火入措置をとる必要があると認められたこと、仙台国税局長は、同月二〇日原告(古市善信)に火入措置をとるよう要請したが、原告は火入措置をせず、同月二四日に再度原告(古沢製品部長)に火入れをするよう指示したがこれも拒否されたこと、さらに、仙台国税局長は、同月三一日古市善信に対し、仙台国税局において火入れを行うので協力してほしいと伝え了承を得たうえ、同年六月八日に千葉国税局間税部酒税課長補佐と徴収第一部門槻山主査を派遣して火入れ作業を行おうとしたところ、原告は、事前に東北電力株式会社棚倉営業所に対し未納料金の支払ができないので送電をストップしてほしいとの申し入れをし、また汚水処理場の機能を停止し使用不能にしていたほか、右槻山主査らに対し、ボイラー等機械器具の使用を禁じたことが認められる。

(2)  右事実によれば、五・一一差押処分で差し押さえられた酒類のうち、タンク収蔵分((1)の清酒)は、その価額が著しく減少するおそれがあった(国税通則法一〇五条一項ただし書)ものと認めることができる。そして、この酒類の品質低下の原因が五・一一差押処分の際徴収職員が意図的に品質を劣悪化させる執行をしたことにあるとは認められないことは、5(六)で判示したとおりである。

(3)  これに対し、瓶詰の清酒((2)の清酒)については、弁論の全趣旨により火入れが済んでいると認められ火落菌の混入はないと考えられるし、他には品質が悪化する特段の事情の存在も認められず、醸造用精白米も特に品質が悪化するような事情を認めるに足りる証拠がないので、これらについては、価格が著しく低下するおそれがあったということはできない。

しかし、本件公売が五・一一差押処分に対する異議申立て中になされたために原告がどのような損害を被ったかについて、原告は何らの主張立証もしない(なお、甲第三六号証の七の一によれば、この異議に対しては、昭和五八年八月一二日付けで棄却決定がなされたことが認められる。)。

(三)(1) 公売処分においては、見積価額の決定は滞納者の権利に重大な影響を及ぼすから、国税局長等が公売物件を一般取引の通念に照らし市価に比して著しく低く見積もり、その結果著しく低い価格で公売した場合には、その公売処分は違法であるというべきである。

甲第三六号証の五の一ないし五の八及び弁論の全趣旨によれば、本件公売物件は、見積価額が税抜きで二億三四八六万八一三六円、酒税込みで八億五一二八万一〇〇〇円と決定され、被告四会社により八億六一〇六万三〇〇〇円で落札されたこと、落札価格から酒税を差し引くと二億五八五七万六二〇〇円になることが認められる。一方、5(四)(1)及び(2)に説示したところによれば、本件公売酒類を公売した場合の売却見込価格(税抜き)は、五億六七七二万七五〇三円であると認めるのが相当である(これを左右するに足りる的確な証拠はない。)。なお、右価格が公売の特殊性を勘案した上でのものであり、市価は七億〇九〇四万五一九九円と認めるべきであることも前述のとおりである。

右事実からすると、本件公売の見積価額は、市価に比して著しく低く、公売価格も著しく低廉で、本件公売処分は違法であるというべきである。

(2)  次に、乙第一九号証の一ないし三及び甲第三六号証の四によれば、仙台国税局長は、見積価額決定にあたり、三名の鑑定人の鑑定結果を参考にしており、右鑑定人らの出した評価額と比較すれば、仙台国税局長が算出した見積価額は著しく低廉とはいえないことが認められる。

しかし、前示のように右鑑定結果は必ずしも合理性のあるものではなく、しかも、右各証拠によれば、鑑定書には、すべて評価額の算出根拠が記載されており、これを見れば、鑑定価格の算出方法が、官能審査で考慮されるはずの米粉糖化液使用による品質低下を独立の減額要素とし、原告の企業イメージや一般のおけ取引の価格でも折り込まれているはずの引取費用、買受後の管理費用なども減額要素とし、一律に六割以上の減額をしたうえで官能審査によりさらに減額しているものであることが明らかであるから、何故右のような大幅な減額をするのか、その妥当性について疑問を持つべきであり、また、官能審査の結果を価格に反映させるについても、鑑定人に対し点数の意味を質問するなどして、妥当な見積価額の決定をすべきであった。

ところが、仙台国税局長は、鑑定書を十分に検討することなく、たやすくその結果を信用して、前記見積価額を決定したのであるから、過失があったといわざるをえない。

(四)  仙台国税局長が本件公売にあたって六億円余りの酒税を付加したこと、被告四会社が本件公売酒類を落札したことは、既に判示したとおりであり、被告四会社が公売酒類を買い受けた後アルコールメーカーへ売却し、アルコールメーカーが納税申告にあたって公売酒類に課された酒税相当額の控除を受けたことは弁論の全趣旨から認められる。さらに、証人山田顕五の証言によれば、被告四会社は、公売前に被告酒造組合の会合で、原告の酒を市場に出さないようにするため、組合を構成している酒造会社の代表として本件公売の酒類を購入することを決め、被告酒造組合から資金提供をうけたこと、当初から清酒として製品化するつもりはなく、公売前からアルコールメーカーと転売交渉を行い直接アルコールメーカーに搬出したことが認められる。

しかし、仙台国税局長が、被告四会社と共謀して被告四会社に落札させたと認めるに足りる証拠はない。また、本件公売にあたり、仙台国税局長が酒税を付加したことは前示のとおりであるから、入札を酒類製造免許を受けている者だけに限るならば、みなし移出(酒税法六条の三第一項)の例外(同項ただし書)として酒税を付加しない扱いがなされるが、そうすると酒類販売免許を受けている者は入札することができず、酒類販売免許を受けている者にも入札を可能にしようとすれば、酒税を付加せざるをえないのであり、本件公売において入札を酒類製造免許を受けている者に限定しなければならない理由はないから、仙台国税局長の右課税措置は何ら違法なものではない。

なお、原告が直接または間接に本件公売物件の買受人となることは、国税徴収法九二条により禁止されているから、原告が本件公売物件を買受けられなかったからといって本件公売処分を論難することは当を得ない。

(五) しかして、公売においては見積価額以上でなければ売却することが許されない(国税徴収法一〇四条参照)ところ、本件公売処分において前記清酒等が前示の適正な評価額以上では売却することが困難であったこと等については、被告国は何らの反証もしないので、原告は、前示違法な公売処分により少なくとも公売価格(税抜き価格)と公売の特殊性を考慮した客観的な価格との差額三億〇九一五万一三〇三円相当の損害を被ったというべきである。

10  次に、免許取消処分の適否について検討する。

原告の債権者が昭和五八年六月二七日福島地方裁判所に原告の会社更生手続開始申立てをしたこと及び白河税務署長が同年九月二七日に原告の酒類製造免許を取り消したことは、原告と被告国間に争いはなく、その他の被告らとの間でも弁論の全趣旨により認められる。

原告が酒税を滞納し一・一九差押処分をはじめとする滞納処分を受けたことは、すでに認定したとおりであるから、原告が酒税法一二条二号の酒類製造免許取消事由に該当していたことは明らかである。また、乙第三六、第三七、第三八号証、第三九号証の一ないし三、第四四号証、第四五及び第四七号証の各一ないし三、第五一号証の一によれば、白河税務署長は、平成五年法律第八九号による改正前の酒税法一五条に基づき、原告ないし原告の保全管理人に対し四回聴問期日を指定・通知し、そのうち当時の原告代表者古市善信が病気であった第一回期日を除く三回の期日において聴問を行い、製造・販売計画、収支見込み、原料入手計画、資金計画、従業員関係などを明らかにするよう求めたが、原告の保全管理人及び取締役からは会社再建のため実現可能な具体策の提示がなかったため、原告が酒類の製造業を継続することは極めて困難で酒税の適正な納付を期待することができないと判断したことが認められる。

そうだとすれば、白河税務署長の原告に対する酒類製造免許取消処分は適法であり、何ら違法な点はなかったということができる。

11  前示のとおり、被告四会社が本件公売にあたり、仙台国税局長と共謀したと認めることはできない。また、被告酒造組合が本件公売に際し被告四会社に入札を依頼し買受資金を融通するなどの関与をしたことは、9(四)で判示したとおりであるが、このこと自体は、同被告の主観的意図に関わらず何ら不法行為を構成するものではない。被告酒販組合については、仙台国税局長をはじめとする国税当局に対し原告に不利な扱いをするよう働きかけたと認めるに足りる証拠は全くない。

したがって、原告の被告国以外の被告らに対する請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。

12  仙台国税局長が違法な本件公売処分をしたことは前示のとおりであるが、これが原因となって原告が破産宣告を受けたと認めるに足りる証拠はない。

したがって、原告が破産宣告を受け事業を継続することが不可能になったことによる損害賠償の請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がない。

二  以上の次第で、原告の本訴請求のうち、被告国に対し国家賠償法一条一項に基づき本件公売処分によって被った損害の賠償として三億〇九一五万一三〇三円及びこれに対する本件公売処分の後である昭和六二年四月一八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、被告国に対するその余の請求及び被告国以外の被告らに対する請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を適用し、仮執行宣言については、相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官赤塚信雄 裁判官綿引穣 裁判官森淳子)

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